今回は吸入ステロイドの話になります
吸入ステロイドよりも「ICS:Inhaled CorticoSteroid」という名称で呼ばれることが多いですね
今では吸入ステロイドといえば喘息治療で使われるイメージは強いと思いますが、昔はβ2刺激薬がよく使われていたようです
その後気道の炎症を抑えるのが大事だということが徐々にわかっていき、吸入ステロイドが喘息治療の中心的な役割を担っていくというわけです
今では薬を併用すること多いので、結局どちらも使ってはいるわけですが、喘息治療としてはこういう経緯を辿ってきたわけですね
吸入薬は大きく分けると3タイプにわけられます
- ステロイド
- 抗コリン薬
- β2刺激薬
喘息ではステロイドとβ2刺激薬が主に使われ、COPDでは抗コリン薬が第一選択薬となります
今回はステロイドの話になりますが、別記事で他の2つの分野についてもまとめようと思います
- フルタイド 1998年
- キュバール 2002年
- パルミコート 2002年
- オルベスコ 2007年
- アズマネックス 2009年
- アニュイティ 2017年
この順番は現在発売されている商品の発売順ですが、デバイスの作り直しで順序がずれています
成分として世の中に出た順番はまた後半でお話しします
吸入薬は調べていくと、効果の強さというよりかは「いかに吸入できるか?」が重要だったのかなと感じました
薬の開発とともにデバイスの開発も進んでいった印象を受けましたね
たくさんの配合剤が発売されており、頭が混乱する人もいるかもしれません
まずは単剤を見ていくことで知識を整理してみましょう!
※インタビューフォームの情報を参考に紹介しています。訂正箇所等ありましたらご連絡頂けると助かります
吸入ステロイドの特徴
吸入ステロイドといえば今では喘息の長期管理薬(コントローラー)の第一選択薬となっています
抗炎症作用が優れている薬です
吸入ステロイドは局所で作用するので、内服薬と比べ全身的な副作用が少ないことも特徴の1つになります
デバイスは2種類
- 定量噴霧式吸入器(p-MDI)
- ドライパウダー吸入器(DPI)
があります
デバイスのそれぞれの特徴についてはここで書くと長くなってしまうので、これも別記事でまとめる予定です
時系列で並べた各薬剤の特徴
それでは吸入ステロイドを時系列で並べつつ、特徴をまとめて見ようと思います
特定フロンの規制がかかったことで、本来最初に発売されたとしと現在のインタビューフォームに記載されている発売日とは違っています
今回はインタビューフォームに記載されている「開発の経緯」から読み取った情報でまとめています!
フルタイド(1998)
フルタイドはインタビューフォームによると、「既存のものより強い局所抗炎症作用を示し、全身への副作用が少ない合成副腎皮質ステロイド」となっています
成分はフルチカゾンプロピオン酸エステルで「フルナーゼ点鼻」と同じ成分です
フルタイドにはデバイスが複数あります
- ロタディスク(1998)
- ディスカス(2001)
- エアゾール(2003)
ロタディスクとディスカスは「DPI」、エアゾールは「pMDI」です
デバイスが複数あり治療の選択肢が広がるのが特徴と言えるでしょう!
キュバール(2002)
成分はベクロメタゾンプロピオン酸エステル
キュバールは粒子径が小さいことが特徴です
粒子径が小さいとより末梢気道に到達しやすくなります
オルベスコが出てくるまでは粒子径が最も小さかった薬です(オルベスコとキューバールは同じくらい)
キュバールの開発の背景を調べてみると出てきた用語として「特定フロン」という言葉があります
従来吸入ステロイドでは噴射剤をつける必要があったわけですが、その噴射剤として使われていたのが「特定フロン」
大学時代に勉強されているかもしれませんが、特定フロンはオゾン層を破壊する可能性があるとして環境問題的に規制されることになります
そこでこの問題を解決するために「特定フロン」を「代替フロン」に置き換える研究から開発が始まったようです
噴射剤として CFC を用いた吸入製剤(CFC-BDP)は、1972 年英国での発売以来世界各国で使用されてきた。本邦においては 1978 年に発売され、気管支喘息の治療薬として有効性及び安全性が確立された(現在は販売されていない)。
引用元:キュバールインタビューフォームより
従来の噴射剤はCFCが使われていましたが、キュバールではHFAが使われるようになりました
キュバールのもう一つの特徴としてアルコール(無水エタノール)が含有されています
これは従来のCFC-BDPが懸濁液だったのに対し、キュバールは溶剤としてエタノールを使うことで完全溶解型の製剤としたかったことが理由で入っているようです
結果として噴射時の粒子径を小さくすることができたようで、肺内到達率が高くなったわけです
アルコールは含まれていますがアルコールが駄目な人に対し禁忌となっているわけではありません
ですがアルコール臭が気になる方はいると思いますので説明はしておいた方がいいでしょう
- CFC:クロロフルオロカーボン
- HFA:1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA -134a)
パルミコート(2002)
成分はブデソニド
調べてみると吸入ステロイドの中では妊婦への第一選択薬となっています
デバイスとしては2つ
- 吸入液
- タービュヘイラー
タービュヘイラーはデバイスの種類としてはDPIの分類に入ります
が、それ以前にpMDIとしてパルミコートがあったようです(1981年開発)
pMDIとして使われていく中で出てきた問題点がありました
- 噴霧と吸入のタイミングが難しい
- フロンガスが含有されていること
1の「噴霧と吸入のタイミングが難しい」というのはpMDIという吸入器そのものの問題点ですね
フロンガスについては先程キュバールで説明した通り、環境問題の関係ですね
これらの問題点を解決しようと作ったのがタービュヘイラー
+αで気道への到達性が良くなったというメリットもあります
オルベスコ(2007)
オルベスコは成人用として国内で初の1日1回投与が可能になった吸入ステロイド
成分はシクレソニド
デバイスはインヘラーというpMDI
特徴として
- 咽頭で活性化されずに肺・気道局所で活性化される
- ステロイド受容体への親和性が高い
などがあるようです
オルベスコの粒子径はほとんどキュバールと同じくらい
キュバールではエタノールを使うことで粒子径を小さくすることが可能になったとありました
そこでほぼ同等の粒子径であるオルベスコはどうなんだろうと思ったのですが・・・
予想通り『無水エタノール』が使われていました
つまりキュバールと同様アルコール臭には気をつけておく必要がありそうです
アズマネックス(2009)
成分はモメタゾンフランカルボン酸エステル
点鼻の「ナゾネックス」と同じ成分ですよね
デバイス名はツイストヘラーといってDPI製剤です
特徴は吸入時に次回量を自動充填してくれるということ
アニュイティ(2017)
成分はフルチカゾンフランカルボンエステル
単剤のアニュイティだとピンとこないかもしれませんが、これとLABAが配合されてるICS/LABA配合の『レルベア』だと聞き馴染みがある方も多いのではないでしょうか?
ちなみにLABAは「ビランテロールトリフェニル酢酸塩(VI)」
不思議なのが合剤のレルベアの方が2013年と先に出てることでした
デバイス名はエリプタでDPI製剤
1アクションで操作可能なので簡単なことがメリットだと言えるでしょう
アラミスト点鼻(2009)と同じ成分の薬です
まとめ
今回まとめになります
- フルタイド 複数のデバイスあり
- キュバール 粒子系が小さい⇦無水エタノール
- パルミコート 妊婦の第一選択薬
- オルベスコ 初の1日1回。粒子径はキュバールと同程度⇦無水エタノール
- アズマネックス 吸入時に次回分を装填
- アニュイティ 合剤のレルベアの処方はよく見る。1アクションで操作可能
といったところですね
後半になると特徴はむしろデバイスの方に重点が置かれている印象を受けました
粒子径が小さい=無水エタノール使用
ということも、理由を含めてわかったので覚えやすくなったのかなと感じてます
今回は現在発売されている薬の発売日順に並べてみましたが、キュバールとパルミコートを調べてみた結果
1978年に特定フロンを使った薬が日本でも出てたようですし、1981年にはpMDIとしてパルミコートが開発されていたようなので
- キュバール
- パルコート
- フルタイド
- オルベスコ
- アズマネックス
- アニュイティ
というのが薬の成分の歴史としては正しい順序になりそうですね!
吸入薬は現在では合剤の方が使用頻度が高い印象ですので、今回の情報が役に立つかは分かりませんが、皆さんの勉強の参考になれば幸いです。
本日は以上になります!お疲れ様でした!
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