時系列で比較しよう!吸入薬シリーズ第2回【β2刺激薬】

前回は吸入ステロイドの話をしましたが今回はβ2刺激薬の話になります!

吸入ステロイドの話に興味がある方はこっちの記事も覗いてみてください!

β2刺激薬というと「SABA」とか「LABA」などで分類されます

気管支拡張作用によって喘息、COPDに使われます

  • SABA:short-acting beta2 agonist 短時間作用性β2刺激薬
  • LABA:long-acting beta2 agonist 長時間作用性β2刺激薬

現在発売されているβ2刺激薬の中で僕らが服薬指導に関わる薬を時系列で発売順(国内)にならべると以下の通りになります

  1. サルタノール  1978年
  2. メプチン    1987年
  3. ベロテック   1999年
  4. セレベント   2002年
  5. オンブレス   2011年
  6. オーキシス   2012年

1つポイントとしてあげるのであれば、β2刺激薬の開発というのは

『SABAからLABAへ』

ということですかね?

ベロテックまでは「SABA」でそれ以降出てきた薬は「LABA」です

ちなみに単剤だと一番最近出た「オンブレス」と「オーキシス」はCOPDにしか適応がないので注意が必要ですね

最近ではICS/LABAやLAMA/LABAなど併用して使われることが多く、吸入配合剤もどんどん発売されています

ただ配合剤を扱う前に単剤の効果についても知っておくことは大事だと思いますし、まだまだ発作時の使用でSABAを使うことはあるので投薬の機会は全然ありえます

それぞれの特徴は知っておきましょう!

※インタビューフォームの情報を参考に紹介しています。訂正箇所等ありましたらご連絡頂けると助かります

目次

吸入β2刺激薬の特徴

β2刺激薬はもともとは経口投与として使われていたようで、最初の薬は「イソプレナリン」だったようでその後も経口投与の薬やテープなどが開発研究されてきたようです

吸入薬が出てきたのは1980年頃から

当初は作用時間が短い薬しかありませんでしたが、より持続性のある薬の研究を進めて現代のようなLABAが開発されるに至ったというわけです

国内で一番最初に出たサルタノールが1978年に発売となっているので、情報がある程度一致していることがわかります

一時期は喘息治療のメインがβ2刺激薬という時代もあったようですが、SABAの乱用による喘息死が問題になったりもし、その後吸入ステロイドが喘息治療の中心になっていったという背景もあります

吸入薬のデバイスは2種類

  • 定量噴霧式吸入器(p-MDI)
  • ドライパウダー吸入器(DPI)

があります

デバイスのそれぞれの特徴についてはここで書くと長くなってしまうので、これも別記事でまとめる予定です

時系列で並べた各薬剤の特徴

それでは吸入β2刺激薬を時系列で並べつつ、特徴をまとめて見ようと思います

今回もいつものように、インタビューフォームに記載されている「開発の経緯」から読み取った情報でまとめています!

サルタノール(1978)

成分はサルブタモール

デバイスはインヘラーでpMDI

インタビューフォームでみると特徴として従来の薬よりも

  • 気管支拡張作用が強い
  • 持続性がある
  • 心血管系に対する影響が少ない

という点ですぐれているようでした

作用発現時間は5~10分、持続時間は4~6時間と「SABA」の特徴といえるでしょう

ただ当時はLABAというものがなかったので、SABAという概念はなかったかもしれないですね

今回は患者さんに指導する機会はないかなと思い、この中にはあげてませんが「ベネトリン吸入液」も同じ成分です

ベネトリン吸入液の発売年は1973年とサルタノールよりさらに前に出ていることになります

メプチン(1987)

成分はプロカテロール

1987年に「キッドエアー」「エアー」「吸入液」が発売されました

キッドエアーとエアーはpMDIで無水エタノールも入っています

「キッドエアー」と「エアー」に関しては特定フロン使用の関係で2003年に代替フロン使用の製剤に切り替わりました

  • オゾン層保護の観点で特定フロン(CFC)が規制されるようになったのが原因

さらに規定噴霧回数以降も使い続けることにより薬剤料が減少した状態で使われるという問題点があり、2009年には「ドーズカウンター」もつきました

1回使用タイプの「吸入液ユニット」も2002年に発売されています

最近では「スイングヘラ-」というデバイスも出ました(2014年)

これはもともと2005年に「クリックヘラ-」というデバイスで出てたんですが、この「クリックヘラ-」の特徴は以下の通りで

  • 薬剤の噴射と吸気の同調が不要
  • 地球環境に影響を及ぼす噴射剤を使用していない
  • DPI製剤

さらにこの「クリックヘラ-」の操作を簡便化し小型化することで携帯性を改善したのが「スイングヘラ-」です

ただ僕はあまり使っている人を見たことがありません

思い返してみると1人だけDPIタイプのメプチンを使ってる人に会ったくらいと記憶しているくらい、使われていないのかなという印象です(個人的な意見ですが)

メプチンの作用持続時間は6~8時間程度で分類としては「SABA」になります

ベロテック(1999)

成分はフェノテロール

デバイスはエロゾルといってpMDIで無水エタノールも入ってます

ベロテックの注意点としては「他のβ2刺激薬が無効な場合に使用」となっている点です

そのせいか使われている人はそんなに見たことがないという印象があります

サルブタモールよりも

  • 気管支拡張作用
  • 持続性
  • β2選択性

の点で優れているようです

作用発現時間は5分で、持続時間は8時間であり「最後に出たSABA」となっています

これ以降に出てくる吸入β2刺激薬はLABAになりますね

セレベント(2002)

成分はサルメテロール

デバイスは2種類で「ロタディスク」(2002)と「ディスカス」(2004)があり、どちらもDPI製剤です

特徴として従来のβ2刺激薬より

  • 長時間持続
  • 作用発現が遅い

という特徴があります

気管支拡張作用が12時間持続する、つまり「初めての長時間作動型のβ2吸入剤」ということで分類としては初の「LABA」となります

現在、日本で喘息に保険適応のある吸入LABAは単剤だと「セレベントだけ」です!

あとは配合の吸入剤でしかLABAは喘息では使えないので注意を

オンブレス(2011)

成分はインダカテロール

デバイスは「ブリーズヘラ-」でカプセル型のDPI製剤になります

特徴としてサルメテロールより

  • 長い持続性
  • 速やかな作用発現

という特徴があります

2009年EUにおいて「COPD患者における気道閉塞性障害の気管支拡張維持療法」を適応症として世界で最初に承認されました

喘息の保険適応はありませんので注意が必要です

オーキシス(2012)

成分はホルモテロールフマル酸塩水和物

デバイスは「タービュヘイラー」でDPI製剤です

現在では単剤の吸入β2刺激薬の中では最も新しい薬になります

発売時期に関してはオンブレスとほぼ同じ時期ですね

これも分類としてはもちろん「LABA」になります

特徴として

  • 作用発現は吸入後5分以内とSABAと同程度
  • 少なくとも12時間は効果が持続する

などがあります

オーキシスも単剤では喘息の保険適応がありませんが・・・

実は同じ成分のホルモテロールフマル酸塩水和物が含まれている「シムビコート」と「フルティフォーム」には喘息の保険適応があります

どちらも吸入ステロイドが入ってるので当然といえば当然かもしれませんが、ちょっと不思議な感じがしますね

注目したいのが特に「シムビコート」の方で、ご存知かもしれませんが維持療法だけでなく頓用吸入も追加で行うことができるということです(SMART療法)

  • SMART:Symbicort Maintenance And Reliever Therapy の略

頓用でなぜ使えるのかという理由ですが、先程オーキシスの特徴であげた「SABAと同程度の作用発現時間」に理由があると考えると理解がしやすいと感じました

まとめ

今回まとめになります

  1. サルタノール 吸入β2刺激薬が使われ出した時代 SABA
  2. メプチン   デバイスが複数あり。pMDIが多い印象 SABA
  3. ベロテック  他の吸入β2刺激薬で効果がない場合 SABA
  4. セレベント  初のLABA。単剤で喘息に適応のあるLABAはこれだけ
  5. オンブレス  保険適応はCOPDのみ。LABA
  6. オーキシス  SABAと同程度の効果発現。合剤のシムビコートは頓服使用も。LABA

実は単剤のLABAで喘息の保険適応があるのはセレベントだけというのは、意外と把握していない人もいるかもしれないですね

SABAに関しては自分の場合は圧倒的にメプチンの使用頻度が多い印象があります

メプチンのスイングヘラ-は比較的最近出たからかもしれませんが、まだまだ目にする機会は少ないですね

セレベント以降LABA単剤が喘息に対する適応がないことに関しては、吸入ステロイドを使ってない状態でのLABAの使用が喘息を悪化させる可能性があるからですね

調べると2006年にセレベントと喘息悪化に関係する論文が出てたので、おそらくこれ以降はCOPDに対してLABAの開発を進めていったんだと思います

単剤で喘息の保険適応がなく配合剤になると喘息の保険適応があるのも同様の理由でしょう

喘息に使う薬でLABAが含まれている吸入配合剤があるのに、その成分の薬が単剤で存在しない理由もこれで納得がいきますね!

吸入薬は現在では合剤の方が使用頻度が高い印象ですので、今回の情報が役に立つかは分かりませんが、皆さんの勉強の参考になれば幸いです。

本日は以上になります!お疲れ様でした!

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