今回はインスリンの空打ちについての話になります
先日患者さんと話している時に、「空打ちは1単位でも大丈夫という話を聞いたよ?」という話になりました
薬剤師としては「1単位で大丈夫です」とは言えないので、「メーカーが推奨している2単位での空打ちをお願いします」という話になると思います
ただこの説明だけでは納得しない患者さんがいるかもしれないですよね?
そこで今回は2単位の空打ちで納得してもらうために「空打ちはなぜ2単位する必要があるのか?」について考察します!
またメーカーと話していく中で他にも空打ちについての話を補足で聞けたので最後におまけとして紹介するので、興味がある人は最後までお付き合いください!
- 空打ちで液が出ない時の対応
- 余剰分が入っているか?
空打ちの目的
まずはインスリン使用時に空打ちをする理由について説明します
メーカーと話をしたところ、インスリンの空打ちをする理由は大きく2つ
- 針がささっているか?
- 空気をぬく
その他にも注入器が壊れていないかなどあるとは思いますが、主な目的はこの2つと
まず針先から液が出てくるのを確認することで、針が問題なくささっているかを確認します
出ない場合は針がまっすぐささっていなかったり、針がまがっている可能性があります
また大きいエアーが入っていることで実際に注入されるインスリンの量が変わってくる可能性があります
ですので、もし大きい空気が入っていた場合はそれを抜く必要があります
空打ちをしても抜けないような小さい気泡については、影響がないと考えられるので無視して大丈夫です
この2つのことを確認するために空打ちをする必要があるということです!
空打ちに必要な量は2単位(例外あり)
先程説明した
- 針がささっているか
- 空気を抜く
のに必要な最低量が空打ちに必要な量と考えることができます!
それがメーカーによると「2単位」となっているわけですね!
ちなみに例外として「ランタスXR注ソロスターは他のインスリン製剤と違い空打ちは3単位」となっているので注意が必要です!
ランタスXRの空打ちが3単位である理由については別の記事でも紹介していますので、詳しく知りたい方はそちらも参考にされてみてください!
そこで「なぜ2単位に設定しているか?」を製造販売元である「ノボ・ノルディスクファーマ株式会社」に聞いてみました
1単位だと不十分という回答『ノボの回答』
問い合わせをしてもらえた回答は
- 針先まで満たされない
- 目視で確認できる量
ということでした
針先まで満たされない
空打ちをする時に、針先から液が出ているのを確認することで問題ないかをチェックするわけですが、1単位だと針先から泡みたいなものがブチュブチュ出ることがあるようです
この場合は針の先端に空気が入っている可能性があり、この状態だと針先まで満たされていない可能性があると
1単位の空打ちだとこうなる可能性があるので、確実に針先まで満たすために2単位が必要であるようです
目視で確認できる量
これは先程の話をかぶりますが、しっかり目視で液が出ているのを確認できる量が2単位という話です
つまり1単位だと自分では出てると判断したつもりでも、実際にはそうではなかった可能性があるということですね
やはりこういった可能性があるので、我々薬剤師も患者さんに説明する際は「空打ちは2単位で」と説明するのがベストだと考えます
まとめ
ネットの情報を調べていると、実際に使っている人の中にも1単位で空打ちをしている方や、1単位で十分と言っている記事もあります
しかし、我々薬剤師としてはその情報を鵜呑みにして1単位で大丈夫とは言わないように気をつけましょう!
1単位で大丈夫というデータは現状なさそうですので
メーカーからも「1単位での空打ちは不十分」という返答を頂いたので、薬局での投薬の際はしっかり
「空打ちは2単位で!」
と説明するようにしましょう!
2単位に設定した数値的な根拠については聞くことが出来ませんでしたが、メーカーとして1単位は推奨しないような返答を頂けただけでもよかったと思います!
ノボ・ノルディスクファーマの担当者さん、本当にありがとうございました!
最後におまけで空打ちの補足情報についてまとめてますので、興味があれば最後までお付き合いください
空打ちで液が出なかった場合の対応方法
インスリンの空打ちをした時に、もし液がうまくでなかった場合の対応方法です
対応の仕方は
- 新品での空打ちの場合
- 使用途中での空打ちの場合
の2パターンでわかれます
新品での空打ちの場合
まだ未開封でこれから使いますよという場合の対応方法です
まず空打ちをしてみて出なかった場合は6回空打ちを繰り返しましょう!
6回空打ちをしても出なかった場合は針がうまく刺さっていない可能性があるので新品の針に変えて再度空打ちを試しましょう
それでもダメな場合は相談を
使用途中の空打ちの場合
すでに使っているインスリン製剤で、途中から空打ちで液が出なかった場合の対応方法です
この場合は1回空打ちをし、もし単位が0に戻っていない場合は針がまっすぐ刺さっていない可能性があるので、新しい針に付け替えて空打ちを試しましょう
それでもダメな場合は相談を
余剰分が入っているか
必要なインスリンの数を確認する時は、毎回使うインスリンの単位数と注射する毎に消費する空打ちの2単位をあわせて計算して必要な本数を考えます
しかし空打ちがうまく行かなかった場合は先ほど説明したように空打ちを複数回使用する可能性があります
そこで添付文書には3mlと書いてあるインスリン製剤は余剰分が入っているかどうかを聞いてみました
するとインスリンが足りなくならない程度に多めに入っているという返答をいただきました!
ただ、具体的な数値としてどれくらい入っているかは答えられないということでしたので、実際どれくらい多めに入っているかはわかりません
説明するにしても具体的な数値は教えることが出来ないので、「少し多めには入っていますよ」というあいまいな指導になりますね
さて今回はインスリンの空打ちについての話をしてきました!
しっかり説明しているつもりでも患者さんによっては針をつけたままにしたり、空打ちについて間違った理解をしているままインスリンを注射されている人も少なくないと思います
僕らも細かく注射手技について確認し、場合によってはアドバイスを出来るようにしておきましょう!
今回は以上になります、お疲れ様でした!!
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