今回は降圧剤の中で「ACE阻害薬」についての話になります
今ではARBが出てきたことによって出番が減ってしまた薬ではありますがゼロではありません
こういう場所を作ってなかったら詳しく調べることはなかったかもしれないと思ったのでいい機会になりました
調べてみてわかったことをいつものように皆さんと共有していこうと思います!
が、調べてみた結果
今回はいつもに比べると、それぞれの薬にそこまで大きな差がないのかなという印象を受けました(-_-;)
それぞれ細かいデータを比較すると差があるのでしょうが、まずはざっくり理解するのがこのブログの方針なのでざっくりまとめます!
まずはACE阻害薬を国内での発売順に並べてみます
- カプトリル 1983年
- レニベース 1986年
- セタプリル 1988年
- アデカット 1989年
- インヒベース 1990年
- ロンゲス(ゼストリル)1991年
- チバセン 1993年
- タナトリル 1993年
- エースコール 1994年
- コナン 1995年
- オドリック 1996年
- コバシル 1998年
※インタビューフォームの情報を参考に紹介しています。訂正箇所等ありましたらご連絡頂けると助かります
ニューロタンが国内で発売された1998年というのはACE阻害薬で最後に出たコバシルと同年に発売された薬
これ以降はACE阻害薬はなくARBがどんどん出てきたこともあり、安全面で優れている為ACE阻害薬→ARBへと時代が変わっていったようですね
ACE阻害薬の特徴
簡単ですがポイントをまとめてみます
- ARBが出る前によく使われていた薬
- 高血圧治療薬の第一選択薬の1つ
- 一部では臓器保護作用
- 高K血症、空咳、血管浮腫の副作用
- 誤嚥の予防
- 構造の違い(SH基、COOH基)
- 短時間⇨長時間
- プロドラッグかどうか
ほぼCa拮抗薬と同時期に登場し、当時は副作用の少なさと顕著な効果でCa拮抗薬と並ぶ降圧剤の第一選択薬となりました
その後ARBが出てきたことで「ACE阻害薬」⇨「ARB」となってきたわけですが、現在でも第一選択薬の中にARBと並んでACE阻害薬は入っています
ちなみに現在の高血圧治療の第一選択薬となっているのは
- Ca拮抗薬
- ACE阻害薬
- ARB
- 利尿剤
となっています
ACE阻害薬の中にはARBと同様に臓器保護作用がある薬も存在します
注意しなければいけないのは副作用です
特に血管浮腫に関しては症状によっては致死的な症状に発展することがあるので注意が必要です
ACE阻害薬の中には構造によって2つに分けられます
それはSH基とCOOH基です
SH基の方が少なく「カプトリル」と「セタプリル」だけなので、それ以外はCOOH基と考えたらいいでしょう
SH基のある薬が最初に出てきたのでデメリットがあると考えるとわかりやすいかも
- 蛋白尿や味覚障害、発疹などが報告されている
- 比較的作用時間が短い
COOH基はSH基よりも結合が弱いんですが、結合数が多いといった特徴があるようです
時代背景としては作用時間が短めの薬から長く効く薬が開発されるようになってきたことがあげられます
ただその中でバイオアベイラビリティがあまり良くなかったため、プロドラッグ化が必要になってきたというところでしょうか?
調べたところ「カプトリル」「セタプリル」「ロンゲス(ゼストリル)」以外はプロドラッグのようです
副作用
ACE阻害薬に特有な副作用は以下の3つ
- 高K血症
- 空咳
- 血管浮腫
高K血症についてはARBにも同様の副作用があります
空咳と血管性浮腫があるのがARBとは違うところ
ただ空咳の機序を活かして誤嚥予防に使われることがあるので知っておきましょう!
というよりかは、ACE阻害薬のこの副作用を改善したのがARBだと思うのでARBにはなくて当然と言うことになりますが・・・
血管性浮腫については先ほども書いた通り場合によっては致命的な症状となることがあるので特に注意が必要です
血管浮腫
初期症状:唇、舌、口内、まぶた、顔、首などが腫れる
好発時期:早いもので服用1時間後、多くの症例で1〜21日に発現している
転帰:ACE阻害薬を注視すればほとんどの場合24〜72時間以内に消退するが、浮腫が咽頭領域に生じた場合には呼吸困難により致死的経過をたどる
引用元:違いがわかる!同種・同効薬「改訂第2版」
禁忌
ACE阻害薬に共通する禁忌としては以下の通り
- 妊娠
- ラジレス投与中の糖尿病患者
- 血管浮腫の既往歴
となっています
各ACE阻害薬の特徴
ここからは各薬剤の特徴についてですが、最初に書いた通りそこまで差がないと感じたので参考程度にどうぞ
カプトリル 1983年
- 初のACE阻害薬
- 錠剤、細粒は半減期が短く1日3回
- 1989年にカプトリルR登場、1日2回
成分はカプトプリル
最初に出たACE阻害薬は服用回数が1日3回と多かったわけですね
服薬アドヒアランス改善のためその後1989年には1日2回のカプトプリルRが登場しました
レニベース 1986年
- 心保護作用
- 慢性心不全(軽症〜中等症)【1991】
- 生後1ヶ月以上の小児【2012】
- 強力で持続時間が長い(カプトリルと比較して)
- 1日1回
- プロドラッグ
成分はエナラプリル
心保護作用があるのが特徴的です
1991年には「軽症から中等症の慢性心不全」に対して適応が追加になりました
レニベースはCOOH基を持つACE阻害薬であり、カプトリルと比較して強力で作用時持続時間の長い薬と言われました
用法も1日1回となっています
日経メディカルのアンケートによると一番人気のあるACE阻害薬のようです
2番目に出た薬が最も人気があるというのはすごいなと感じました
セタプリル 1988年
- カプトリルから誘導されたSH基含有のACE阻害薬
- カプトリルの問題点を改善
- 1日1〜2回
成分はアラセプリル
開発の原点はカプトリルのようでカプトリルの問題点を解決した薬
インタビューフォームを読んんで見ると
- 降圧作用の発現が急激
- 持続時間の短さ
- 海外での副作用の発現が比較的多い
これらのことが問題点として挙げられていました
この問題点を解決したということでカプトリルに比べると
- 降圧作用の発現が緩徐
- 持続性がある
薬となっているようです
1日1〜2回となっていますが、この時点でエナラプリルがあるのでエナラプリルに対してメリットがあるのかと言われると微妙ですね
アデカット 1989年
- 国産初の非SH基エステル型プロドラッグ
- 1日2回
- 後発品なし
成分はデラプリル
この薬も1日2回服用する必要がある薬になります
国産初の非SH基の薬というのが特徴
ただインタビューフォームがなかったので詳しい情報は分かりませんでした
アデカットには後発品が存在しないので使う場合は先発品だけとなります
インヒベース 1990年
- プロドラッグ
- 先発品のインヒベースは発売中止
- 腹水を伴う肝硬変のある人には禁忌
- 1日1回
成分はシラザプリル
現在ではすでに先発品のインヒベースが販売中止になっていることから、使おうと思ったら後発品を選択する必要があります
他の薬と違い注意すべき点として「腹水と伴う肝硬変の患者」には禁忌であるという点です
活性代謝物の血中濃度が上昇してしまうことが禁忌の理由です
48時間後においてもACE活性が90%以上阻害されたままであり、活性代謝物のシラザプリラートの血中濃度が高い状態となり過度な降圧となったようです
ロンゲス(ゼストリル) 1991年
- 肝代謝を受けない
- エナラプリル活性体のリジン誘導体
- 作用発現に代謝による活性化を必要としない初の薬
- 1日1回
成分はリシノプリル
リシノプリルはエナラプリル活性体のリジン誘導体ということで、特徴としてはレニベースに類似していると感じました
特に適応の面で考えてみると
エナラプリルは1995年に軽症〜中等症の慢性心不全の適応が追加になりましたが、リシノプリルは同年に「ジギタリス製剤、利尿薬等の基礎治療剤を投与しても十分な効果が認められない慢性心不全(軽症〜中等症)」が追加
さらにエナラプリルが2012年に生後1ヶ月以上の小児の適応が追加になった年には「高血圧症における6歳以上の小児に対する用法用量の追加承認」
と、どちらも適応の追加が同年であり、類似している印象を受けました
肝臓での代謝を受けないのでほぼ未変化体のまま腎から排泄されます
作用発現に際して代謝による活性化を必要としない薬となります
チバセン 1993年
- プロドラッグ
- カプトリルより強く持続時間が長い
- 1日1回
- 空咳の副作用発現率が7.25%と高い
成分はベナゼプリル
この薬はプロドラッグで、経口投与後に生体内で活性代謝物にすぐに変換されることでカプトリルより強く、作用持続時間の長い効果を発揮します
1日1回の投与で24時間血圧をコントロールすることが可能です
ただ他のACE阻害薬と比べてみると空咳の副作用頻度が高めとなっているので注意が必要になります
タナトリル 1993年
- プロドラッグ
- 腎実質性高血圧症
- 1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症(2.5mg,5mgのみ)【2002】
- 空咳の頻度が少ない
- 1日1回
成分はイミダプリル
今でもACE阻害薬の中では比較的よく見かける薬
「空咳が少ないACE阻害薬」というのがこの薬の特徴であり、安全面でも使いやすい薬なのではないでしょうか?
腎実質性高血圧症、1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症にも適応が通っています
エースコール 1994年
- プロドラッグ
- 主に胆汁中へ排泄
- 1日1回
成分はテモカプリル
この薬も比較的見かけるACE阻害薬だと思います
主に胆汁中に排泄される薬で、1日1回のACE阻害薬の中では新しい胆汁・腎排泄型ACE阻害薬といえます
コナン 1995年
- 組織移行性を高める3-イソキノリル基を持つ
- 1日1回
- プロドラッグ
- 後発品はなし
成分はキナプリル
この薬もアデカットと同様に後発品が存在しません
使う場合は先発品の採用ということになります
後発品が出ていないくらいなのであまり使われていないということでしょうか?
ちなみに自分は見たことないです
オドリック 1996年
- 従来の薬よりACE阻害作用が強い
- 半減期が長い
- 1日1回
- プロドラッグ
ここから先の薬は半減期が長いです
成分はトランドラプリル
インタビューフォームによるとこれまでの薬よりもACE阻害作用が強いと書いてあるので、効果は強いと考えていいのでしょうか?
ただあまり使われていない印象で、この時点で作用の強さよりも安全性を重視してACE阻害薬は選択されていたのかもしれないですね
さらにこの数年後には「ARB」という新しい薬が出てきたことも要因の1つかもしれないです
半減期が2相性で第二相が97〜188時間と長いのが特徴的だなと感じました
コバシル 1998年
- 同年にARB「ニューロタン」が登場
- 半減期57.3〜114.4時間と長い
- プロドラッグ
- バイオアベイラビリティ94%
- 空咳の発現頻度8.22%と高い
- 1日1回
成分はペリンドプリル
バイオアベイラビリティが94%とかなり高めなのが特徴的な薬です
副作用の空咳の頻度が8.22%と高く注意が必要ですが、日経メディカルによると4番人気のようで比較的使われているみたいですね
半減期もかなり長くなっています
コバシルが出た1998年に国内で初のARBであるニューロタンが登場しました
ここが転機だったんだとでも言うかのように、これ以降は降圧剤として現状新しいACE阻害薬は登場していません
ここからARBの適応がどんどん追加されるまではACE阻害薬も使われましたが、どんどんARBにシフトしていくことになるわけですね
まとめ
最後に簡単に全体のまとめを
- カプトリル 最初のACE阻害薬。後に徐放製剤も(1日2回)SH基
- レニベース 心保護作用。慢性心不全(軽〜中)や小児に使える
- セタプリル カプトリルの問題点を改善。1日2回。SH基
- アデカット 国産初の非SH基プロドラッグ。1日2回。後発品なし
- インヒベース 先発品は販売中止。腹水を伴う肝硬変の患者には禁忌
- ロンゲス(ゼストリル) エナラプリラートのリジン誘導体。肝代謝を受けない
- チバセン 空咳が出る確率が他より高め
- タナトリル 空咳の頻度少なめ。1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症に適応
- エースコール 胆汁・腎排泄型ACE阻害薬
- コナン 後発品なし
- オドリック 半減期が2相。第2相は97時間と長く緩やかに消失
- コバシル バイオアベイラビリティ高め。空咳の頻度が多い
実際にまとめてみると
短時間⇨長時間⇨プロドラッグ
と言う流れで見ていくと把握しやすいのかなと感じました
コバシル以降はARBが登場してきたことで、それ以降高血圧治療としてのACE阻害薬は登場してきていません
ARBについても別記事でまとめているので、もしこの記事が参考になったと感じ方はARBについての記事も参考にされてみてください
本日は以上になります!お疲れ様でした!
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