今回も引き続き利尿薬についての話になります
前回はサイアザイド系(チアジド)利尿薬についての話をしましたが、次はK保持性利尿薬について
サイアザイド系利尿薬について知りたい方は別記事で紹介してますので、よければ参考にしてみてください!
K保持性利尿薬といえば「アルドステロン」がキーワードになってくると思います
薬品名でいうと「アルダクトンA」や「セララ」などが現在はよく使われている薬ではないでしょうか?
「K保持性利尿薬だから高K血症に注意しなきゃ!」というのは名前の通り分かって当然
でも、それ以外の特徴について「実はあまり知らない」
という方は今回の記事を参考にしてみてください!
まずは時系列を追っていくことで全体像を把握してから各薬剤の特徴を見ていきましょう
薬剤名 | 発売年(国内) | 成分 |
トリテレン | 1962年 | トリアムテレン |
アルダクトンA | 1978年 | スピロノラクトン |
セララ | 2007年 | エプレレノン |
ミネブロ | 2019年 | エサキセレノン |
K保持性利尿薬の特徴
K保持性利尿薬の話をする上でポイントになるのは「アルドステロン」
アルドステロンについて少し知っておくと、今回の話は理解しやすくなると感じたのでまずはアルドステロンについて把握します
アルドステロンとは?
情報が多すぎても疲れると思うのでざっくり説明します
- ステロイドホルモンの1つ
- 鉱質コルチコイド
- Naの再吸収
- カリウムの排出
- 水分保持
アルドステロンにはこれらの特徴があることから、アルドステロンに拮抗することで「利尿作用」「K保持」という効果を発揮するわけです
またステロイドホルモンというのもポイントで、これが副作用である「女性化乳房」が出る原因となります
Kを保持することで高K血症のリスクがあるので「不整脈」「腎障害」には注意しましょう!
その他の特徴としては心保護作用をもちます。これは心血管系の線維化抑制によるものです
K保持性利尿薬の機序ですが、遠位尿細管および集合管においてアルドステロン依存性のNa/K交換系を阻害します
これにより、先程のアルドステロンの特徴とは逆の作用
- Kの排泄、Naの再吸収を抑制
- Naおよび水分の排泄
が発揮され利尿薬としての効果が出現するわけですね
Kを保持してくれるのでループ利尿薬と併用することで低K血症を抑えてくれます
各薬剤の特徴をまとめよう
K保持性の利尿薬は4種類
最初に出たトリテレンは分類としてはNaチャネル遮断薬、その他の薬が抗アルドステロン薬にわけられます
それぞれの特徴についてまとめます
トリテレン 1962年
K保持性利尿薬の中では一番最初に登場した薬で、成分はトリアムテレン
他のK保持性利尿薬とは違い、アルドステロンの分泌とは無関係に作用を発揮する薬です
この中では例外ということになりますかね
インタビューフォームの製剤学的特性によると
トリアムテレンは副腎鉱質コルチコイドに拮抗して遠位尿細管においてナトリウムイオンとカリウム
参照元:トリアムテレン インタビューフォーム 製品の治療学的・製剤学的特性より
イオン及び水素イオンの交換を抑制し、ナトリウムの再吸収を阻害するが、この作用はアルドステロン
分泌とは無関係に起こることから、遠位尿細管に対する直接作用も有すると考えられる。
ということです
アルドステロンとは無関係だけど、アルドステロン拮抗薬と同じ作用を発揮するということですね
もともと葉酸拮抗を目的に合成されたみたいですが、Na利尿作用があることが分かり開発に至ったようです
ですので葉酸欠乏、葉酸代謝異常のある患者には慎重投与となっています
この薬には後発品は存在しないので、使う場合は先発品のトリテレン
浮腫にも適応があります
- 心性浮腫
- 腎性浮腫
- 肝性浮腫
K保持の為、高K血症に注意しなければいけないことより「急性腎不全」には禁忌となっています
アルダクトンA 1978年
今でもよく使われている薬であるアルダクトンA
成分はスピロノラクトンです
ここから抗アルドステロン薬ということで、ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬と言われてる薬です
アルドステロンについては先程説明したので、効果が出る機序についてはさっきの説明の通り
トリテレンと同様浮腫にも適応がありますが、トリテレンよりも適応の数が多くなっています
- 心性浮腫
- 腎性浮腫
- 肝性浮腫
- 特発性浮腫
- 悪性腫瘍に伴う浮腫及び腹水
- 栄養失調性浮腫
また原発性アルドステロン症の診断および症状の改善にも使うことが出来ます
半減期は約12時間と長くなっており、Kを保持するからだと思いますが糖代謝に影響を及ぼさない利尿薬という特徴もあります
他には高尿酸血症や痛風の悪化が少ないと言われています
注意点としては、この薬はステロイドホルモンに関係する薬なので副作用である「女性化乳房」に注意が必要です
アルドステロンと同じステロイドホルモンであるアンドロゲン(男性ホルモン)受容体にも作用してしまうのが原因のようです
トリテレンと同様の理由で「急性腎不全」には禁忌となっています
セララ 2007年
アルダクトンが登場してから約30年経過してから登場した薬で、成分はエプレレノン
セララの特徴は鉱質コルチコイド受容体へのアルドステロンの結合を選択的に阻害する「選択的アルドステロンブロッカー(SAB)」ということです
選択性が高くなったことで、アルダクトンAの副作用である女性乳房の副作用を減らすことが出来るという点が改善されたポイント
2016年には慢性心不全の適応が追加へ(25mg、50mg)
今までのK保持性利尿薬と違い浮腫には適応がない点は注意が必要です
ですので使えるのは「高血圧」と「慢性心不全」となります
注意点としては「中等度以上の腎障害」と「微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者」には禁忌であること
CYP3A4で代謝されるので相互作用には注意が必要になる点は覚えておきましょう!
CYP3A4を阻害する薬と併用する場合は最大量が25mgまで
CYP3A4を強く阻害する薬とは禁忌となっています
後発品は現時点では存在しないので、使う場合は「セララのみ」となっています
ミネブロ 2019年
最近出た薬で、自分もまだ処方されているのをみたことがありません
成分はエサキセレノン
今までの抗アルドステロン薬とは違って「ステロイドではない」というのが特徴です
「非ステロイド型のミネラルコルチコイド(MR)受容体ブロッカー」と言われています
ステロイドホルモンではなくなったというのがポイントで、性ホルモン関係の副作用が減っています
つまり、「女性化乳房」や「月経困難」が起こりにくいとされているのが最大の特徴だと考えます
高いMR選択性になることでエプレレノンであった禁忌も無くなっているので、 「中等度以上の腎障害」と「微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者」にも使えます
半減期は約19時間とかなり長くなっています
比較的新しい薬ということもあり、現状では適応は「高血圧のみ」となっています
もちろん特許はまだ切れていないので後発品はまだありません
まとめ
今回は利尿薬の中から「K保持性利尿薬」についてまとめてきました!
薬剤名 | 発売年(国内) | 特徴 |
トリテレン | 1962年 | Naチャネル遮断薬 後発品なし |
アルダクトンA | 1978年 | 最初の抗アルドステロン薬 ステロイドホルモン→女性化乳房の副作用 |
セララ | 2007年 | 選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(SAB) 選択性が高い→女性化乳房のリスク軽減 相互作用注意(CYP3A4) 適応:高血圧、慢性心不全のみ 後発品なし |
ミネブロ | 2019年 | 非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 非ステロイド→女性化乳房、月経困難のリスク軽減 適応:高血圧のみ セララの禁忌がなくなった |
こうして時系列で追っていった結果
「ステロイドホルモンに作用するデメリットをどう改善したか?」
という背景が浮かび上がってきましたね!
今回の内容は時代背景的にもわかりやすかった印象なので、少なくとも「アルダクトンA」と「セララ」の違いはわかる内容にはなったかなと感じました!
今後「ミネブロ」がどれくらい市場に回ってくるかが注目ですね~
今回は以上になります!!
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