今回は利尿薬の話になります
分野としてはサイアザイド系、サイアザイド類似薬になります!
『サイアザイド系の利尿薬って、詳しくはどんな特徴があるかわからない』
『利尿薬、高血圧?』
今回はこんな印象を持っている方にとって参考になる情報を紹介します!
この分野の薬の中で、普段の業務において特によく見るのは「フルイトラン」「ナトリックス」
配合剤として「ヒドロクロロチアジド」が含有されてる薬も多いので
- ヒドロクロロチアジド
- フルイトラン
- ナトリックス
が個人的にはよく見かける薬だと思うので、特にこの3つの特徴を抑えていければと思います
時系列でみたサイアザイド系利尿薬
まずはサイアザイド系、サイアザイド類似薬を時系列でまとめます
サイアザイド系利尿薬 | 発売年(国内) | 成分 |
ヒドロクロロチアジド | 1959年 | ヒドロクロロチアジド |
フルイトラン | 1960年 | トリクロルメチアジド |
べハイド | 1961年 | ベンチルヒドロクロロチアジド |
サイアザイド類似利尿薬 | 発売年(国内) | 成分 |
バイカロン | 1975年 | メフルシド |
ノルモナール | 1982年 | トリパミド |
ナトリックス | 1985年 | インダパミド |
ここから見てもわかるように、先にサイアザイド系の利尿薬が開発されてます(当然かもしれませんが)
その後サイアザイド類似利尿薬が登場し、順番としては「サイアザイド→サイアザイド類似」という流れになります
サイアザイド系の薬はどれも発売年にそれほどの差がないことから、ほぼ同時期に出た薬と言えるでしょう
サイアザイド類似利尿薬は最初のバイカロンから10年の時間を経てナトリックスが登場しました
今でも尚使われている薬ですので、それぞれの特徴を時代を追って抑えてみましょう!
サイアザイド系利尿薬(類似)の特徴
サイアザイド系利尿薬の特徴を自分なりにまとめてみると
- 遠位尿細管での作用
- 主に降圧剤としての作用
- K低下作用
- 腎機能低下時には使えない
といったところでしょうか?
情報量が増えすぎると読むのも疲れるのでざっくり紹介します!
遠位尿細管での作用
サイアザイド系利尿薬は遠位尿細管のNa-Cl共輸送体を阻害することでNaの再吸収を抑制しその効果を発揮します
また同じく遠位尿細管のNa-Ca交換を阻害することもポイントの1つです
この作用によるCaの再吸収が増えるので、骨粗鬆症を合併している高血圧患者にはサイアザイド系の利尿薬が推奨されています
主に降圧剤として使用する
利尿薬とはなっていますが、サイアザイド系の利尿薬は高血圧に対して使われることが多いです
しかし原則として少量使用が原則になっていて、添付文書に記載されている用量だと多い可能性があります
フルイトランやナトリックスが半錠にする機会が多いのはこれが理由だと考えられます
量を増やしても効果はそこまで変わらず、副作用が増える可能性があるので注意
K低下作用
サイアザイド系利尿薬は長期服用することで低K血症が起きる可能性があります
この副作用があるため、高K血症が副作用になっているARBと相性がよく配合錠も発売されています
- プレミネント(ロサルタン+ヒドロクロロチアジド)
- コディオ(バルサルタン+ヒドロクロロチアジド)
- エカード(カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド)
- ミコンビ(テルミサルタン+ヒドロクロロチアジド)
- イルトラ(イルベサルタン+トリクロルメチアジド)
サイアザイド系利尿薬を単剤で使う場合はフルイトランがよく使われている印象でしたが、配合錠としてはヒドロクロロチアジドの方が多いですね
腎機能が低いと使えないことも
サイアザイド系の利尿薬が作用する遠位尿細管では糸球体で濾過されたNaの7%程度しか再吸収されていません
よってある程度腎機能が低下してくると、効果がほぼない状態になってしまいます
- eGFR30ml/分未満
- 血清クレアチニン2mg/dl以上
この条件に当てはまる方には基本的にサイアザイド系利尿薬単剤では使えないことになるので注意が必要です
ただしループ利尿薬と併用すると効果が得られるという報告があるみたいですので、条件に当てはまっていてもループ利尿薬と併用している場合は大丈夫な可能性が高いと考えてよさそうです
ただ、この場合は副作用には注意が必用になるので慎重に体調の変化など確認しましょう!(低カリウム血症、高尿酸血症、腎機能悪化など)
各薬剤の特徴
ここからはそれぞれの薬についての特徴についてまとめます
サイアザイド系、サイアザイド類似利尿薬の順にいきます
サイアザイド系利尿薬
サイアザイド系利尿薬は3つ
- ヒドロクロロチアジド
- フルイトラン
- べハイド
ベハイドは見かける機会は少ないので、特に「ヒドロクロロチアジド」「フルイトラン」を重点的にまとめたいと思います
サイアザイド系の利尿薬は高血圧だけでなく浮腫にも適応があります
どの浮腫に使えるかは添付文書で確認しておきましょう!
ヒドロクロロチアジド
最初に出てきたサイアザイド系利尿薬がヒドロクロロチアジド
ですが、この薬からサイアザイド系利尿薬最後の薬であるベハイドまでは2年間しか間隔がありません
出た時期は全体としてそこまで変わらないという印象でいいでしょう
もともとはニュートライドという製品名で使われていたようです
先発品はないので成分名の「ヒドロクロロチアジド」を覚えておいたらOK
当初は25mgの規格が登場しました
特徴でもあげましたが、少量使用がいいということが分かったからか、時間がたって2012年に12.5mgの規格が発売されたようです
翌年の2013年には口腔内崩壊錠も登場しました
結石予防効果があるといわれています
単剤での使用量はフルイトランの方が多いですが、ARBと一緒になっている配合錠のほとんどの成分はこの「ヒドロクロロチアジド」です
月経前緊張症の適応もあります
- 最初のサイアザイド系利尿薬
- 低用量の12.5mgは2012年
- 2013年にOD錠登場
- ほとんどARBとの配合錠はヒドロクロロチアジド
- 結石予防効果
- 月経前緊張症に適応
フルイトラン
ヒドロクロロチアジド(ニュートライド)の翌年である1960年に登場した薬
成分はトリクロルメチアジド
ヒドロクロロチアジドよりも後に出てきましたが、低用量のフルイトラン1mgは低用量のヒドロクロロチアジド12.5mgよりも先に2009年に登場しました
この辺が現在よく使われている理由かもしれないです
ヒドロクロロチアジドと同様に月経前緊張症の適応があります
ARBとの配合錠は現在イルトラのみとなっています。それ以外はヒドロクロロチアジドです
フルイトランは半錠にする機会が多い薬ではありますが、ここで注意点が1つ!
フルイトランは錠剤を見ると割線が入っているように見えますが、実際は「割線ではない」が正しい情報です
- 割線かどうかは添付文書を見るとわかります。添付文書に割線と記載がなければ割線ではないです
実際に添付文書の「性状・剤形」を見てみましょう!
すると「花形の錠剤である」としか書かれていません。
よってフルイトランは割線ではないということになります
自家製剤加算を算定する条件に「割線があるかどうか」があるので注意しましょう
フルイトラン以外だと
- メイラックス
- リフレックス
も見た目に反して「割線なし」となっているので注意を
- 低用量の1mgは2009年
- 月経前緊張症の適応あり
- ARBとの配合錠はイルトラのみ
- 割線ではない
ベハイド
成分はベンチルヒドロクロロチアジド
自分は今までで処方されているのは見たことがないですね
この薬には後発品がありません
ベハイドRAという高血圧にしか適応がない薬もあるんですが、こちらは販売中止となるので今後は触る機会はなくなります
一応説明すると、レセルピンとカルバゾクロムをあわせた薬です
相乗的な薬理作用の増強と合併症及び副作用の軽減を目的に作られた製剤のようですが、結局は販売中止に
需要がなかったということでしょう
- 後発品なし
- べハイドR Aは販売中止
サイアザイド類似利尿薬
類似利尿薬はサイアザイド系利尿薬とは違って、適応が高血圧だけ(バイカロンは浮腫にも使える)となっています
薬は3つあって
- バイカロン
- ノルモナール
- ナトリックス
ですね。よく使うのは最後に出たナトリックス
半錠にすることが多い薬ですね
バイカロン
成分名はメフルシド
サイアザイド系の利尿薬が出てから約15年、初めてのサイアザイド類似利尿薬
サイアザイド系の薬とは違う構造をもった降圧利尿剤です
サイアザイド類似利尿薬の中では、この薬だけ慢性浮腫における利尿剤として適応が入っています
緩徐でかつ持続的な利尿効果を持ちます
心性浮腫、腎性浮腫、肝性浮腫ですね
- 最初のサイアザイド類似利尿薬
- 慢性浮腫にも適応(心性、腎性、肝性浮腫)
ノルモナール
2番目に出たサイアザイド類似利尿薬
成分はトリパミドです
この薬の後発品はありません
血管平滑筋の弛緩作用及び利尿により緩徐な降圧作用を示します
腎血流量を減少させず、糸球体濾過量にも影響しないというのが製剤学的特性として記載がありました
高血圧に伴う頭痛・手足のしびれなどの自覚症状も改善するようです
- 後発品なし
ナトリックス
サイアザイド類似利尿薬という分野では最後に出た薬です
比較的使用頻度が多い薬でしょう
成分はインダパミド
血管拡張作用があり、適応は本態性高血圧のみ
降圧活性が強く持続性で利尿作用が比較的弱い薬となっています
サイアザイド系利尿薬では低用量の薬が後で登場しましたが、ナトリックスに関しては逆でした
1985年に1mgが登場し、その後1990年に2mgが発売という流れです
ナトリックスの特徴として低K血症の副作用軽減があります
ヒドロクロロチアジドやトリクロルメチアジドに比べてK排出作用が弱く、低K血症が起こりにくくなっています
ナトリックスには後発医薬品が存在しません
比較的使われてる気はするので不思議な感じはしますね
余談ですが1990年にナトリックスの小分けの後追い共同開発品としてテナキシルが発売されています
ただテナキシルよりもナトリックスを見る機会が多いと言えるでしょう
- 血管拡張作用あり
- 高用量の2mgが1990年
- 低K血症の副作用軽減
- 後発品なし
- 後追い共同開発品→テナキシル
まとめ
今回はサイアザイド系利尿薬とサイアザイド類似利尿薬についてまとめました
最後によく使われてる薬のみまとめてみようと思います
薬剤名 | ポイント |
ヒドロクロロチアジド | ARBとの配合錠に多い |
フルイトラン | 割線× 低用量の1mgはヒドロクロロチアジドの低用量より早く登場 ARBとの配合錠はイルトラのみ |
ナトリックス | 血管拡張作用 低K血症の副作用軽減 浮腫には適応なし |
単剤では圧倒的にフルイトラン、配合錠ではヒドロクロロチアジドですね
配合錠のメリットも後でたまたまARBが登場してきたことから需要が出たことを考えると、それまではあまり使っていなかったのかも
今回サイアザイド系(類似)利尿薬をまとめてみて、今まで薄っすらとしか分かってなかった全体像を把握出来たかなと感じています
服薬指導でこれらの情報を話すことはないかもしれませんが、個人的には薬歴に記載することで次の投薬の参考になるのではと考えてます
今回の情報が医療従事者の皆さんの役に立てば幸いです!
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