時系列でARBの特徴を把握しよう!【高血圧治療薬を比較する】

今回は血圧関連の薬に突入します!

降圧剤の中では新しい分野であるARBについて調べたことをまとめます!

最近では合剤がたくさん出てきたこともあり、単剤で見る機会は少なくなったかもしれません

しかし合剤のそれぞれの特徴を抑えておくことでより良い服薬指導ができる可能性はあると思うので、ここで一度ざっくりでいいので把握してみましょう

ざっくりでも抑えておけば、後は添付文書やインタビューフォームですぐ調べられる時代なので役に立つと思います

まずはARBの国内での発売順に並べてみます

  1. ニューロタン  1998年
  2. ブロプレス   1999年
  3. ディオバン   2000年
  4. ミカルディス  2002年
  5. オルメテック  2004年
  6. イルベタン(アバプロ) 2008年
  7. アジルバ    2012年

※インタビューフォームの情報を参考に紹介しています。訂正箇所等ありましたらご連絡頂けると助かります

ニューロタンが国内で発売された1998年というのはACE阻害薬で最後に出たコバシルと同年に発売された薬

これ以降はACE阻害薬はなくARBがどんどん出てきたこともあり、ACE阻害薬→ARBへとシフトしていってるのが分かりますね

ちなみにACE阻害薬については別記事でまとめてるので、よろしければそちらも参考に

目次

ARBの特徴

ARBの特徴を把握するためのポイントは

  • ACE阻害薬の次に出てきた薬
  • 高血圧治療の第一選択薬の1つ
  • 臓器保護作用
  • 特に副作用がなくACE阻害薬と同等以上の効果

ACE阻害薬の欠点である副作用、特に空咳が改善されていることはよく知られているところ

さらに同等以上の効果があるとされているため今ではすっかりARB>ACE阻害薬となっています

現在の高血圧の第一選択薬の1つになっています

ちなみに第一選択薬となっているのは

  • Ca拮抗薬
  • ACE阻害薬
  • ARB
  • 利尿剤

となっています

ACE阻害薬もそうですが、ARBには臓器保護作用(心臓、腎臓など)があるのでさまざまな病態を持っている方に使われます

ARBが出てきた当初、ARBの適応は本態性高血圧のみでした

その為最初の頃はACE阻害薬を使う頻度が多かったようですが、次第に適応が追加になっていった関係でだんだんとARBが使われるようになったようです

ミカルディスやイルベタンに関してはPPARγ活性化作用もあるようなので糖尿病の患者さんにも有効となるのが特徴です

このようにさまざまな効果を持っている副作用のない薬というのがARBの特徴と言えるのではないでしょうか?

副作用

先程から書いている通り、副作用は重篤なものはほとんどないといわれています

頻度が高い副作用でいうと

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • ふらつき

ここらへんは血圧低下によるものでしょうか?

次いで頻度が高い副作用として

  • 頭痛
  • 腹痛
  • 悪心、嘔吐

などがあります

投与量を上げても副作用は増加しないようです

各ARB間でも差はほとんどありません

禁忌

ACE阻害薬とかぶりますが、以下の2つ

  • 妊娠
  • ラジレス投与中の糖尿病患者

となっています

ACE阻害薬には血管浮腫の既往歴ありの方が禁忌だったりしましたが、ARBでは禁忌から外れてます

副作用が少なくなった影響がこういうところに反映されているようです

各ARBの特徴

特徴はざっとおさらいしてきたので、ここからは各薬剤の特徴について自分でまとめられる範囲でまとめていきます

ニューロタン 1998年

  • 初のARB
  • 高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症に適応
  • 尿酸低下作用

成分はロサルタンカリウム

最後のACE阻害薬のコバシルと同年に国内に出てきたARBで、世界で初めての持続性A-Ⅱアンタゴニスト

ブラジキニン代謝に影響を及ぼさない、副作用の少ない降圧薬として期待されました

ここからARBが始まります

2006年には「高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」の適応が追加されました

ニューロタンには尿酸低下作用があります

作用機序はユリノームと同じで近位尿細管の尿酸トランスポーター阻害による尿酸排泄促進によるようです

ブロプレス 1999年

  • 腎実質性高血圧症
  • 慢性心不全
  • 日本で開発された最初のARB

成分はカンデサルタン

国内で2番目に出てきた薬

正直これ以降のARBはどれも普段から目にする機会が多い印象ですので、それぞれ特徴は抑えておきたいところ

2005年には「慢性心不全」に対しての適応が追加になっているのもブロプレスの特徴の1つと言えるでしょう

ディオバン 2000年

  • ディオバン事件
  • 食事の影響あり→臨床上の効果の影響は少ない
  • 小児高血圧

成分はバルサルタン

この薬で最も有名なのは「ディオバン事件」です

つい先日に「最高裁が東京高検の上告を棄却し無罪が確定した」というニュース記事が上がってました

簡単にいうとディオバン事件というのは「データ改竄」があったという話

5つの臨床研究論文で不正があったようです

調べてみると、これをきっかけに特定臨床研究法が制定されたと

企業からの支援を受けた臨床研究 ⇨ 治験と同様モニタリングと監査の実施

実施計画 ⇨ 指定を受けた審査委員会の意見を受けた上で厚労省へ報告する

が義務になりました

こうして書くと悪い印象しかありませんが、別にディオバンが降圧剤として効果がなかったという話ではありません

今でも普通に使われますし、配合剤も出ています

食事の影響によるCmaxやAUCが下がるみたいですが、効果に影響が出るほどではないようです

ミカルディス 2002年

  1. 3種類の降圧剤が含まれた合剤がある
  2. 胆汁排泄
  3. PPARγ活性化作用
  4. 食事の影響あり

成分はテルミサルタン

現在のところ降圧剤でARBがを含む3種類の合剤が出てるのはこのミカルディスのみ(ミカトリオ)

排泄は胆汁排泄となっており腎障害の影響を受けないので、腎障害のある患者さんに使いやすい薬です

ミカルディスはPPARγ活性化作用を持ちます

これは構造が他のARBとは少しことなり、アクトス(ピオグリタゾン)と類似の構造を持っているため、アクトスと同じ機序でPPARγが活性化されるという理屈のようです

調べてみると「メタボサルタン」と呼ばれていることもあるようです

ミカルディスは食事の影響を受けます

添付文書を見ると、適用上の注意の欄に食事に関係する注意事項が記載されているので注意が必要です

本剤を食後に服用している患者には、毎日食後に服用するよう注意を与えること。本剤の薬物動態は食事の影響を受け、空腹時投与した場合は、食後投与よりも血中濃度が高くなることが報告されており、副作用が発現するおそれがある。

引用元:ミカルディス添付文書より

余談ですが、ミカルディスはもともとカプセルとして発売されたようで、コンプライアンス改善の為に2004年に錠剤が開発されたようです

オルメテック 2004年

  • 従来のARBよりも強い降圧作用

成分はオルメサルタン

アジルバが出るまではARBの中では最も効果が強いといわれていた薬です

AT1受容体に対して高い親和性を持つことから、降圧作用が強くなったという話

AT1受容体は血圧上昇の作用、AT2受容体は血圧を低下させる作用があると言われています

イルベタン、アバプロ 2008年

  • アムロジピンの10mgとの配合錠はこの成分のみ
  • 海外「高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」
  • PPARγ活性化作用
  • 尿酸低下作用(高用量)

成分はイルベサルタン

国内では6番目に出てきた薬ですが、もともと海外では使われていた薬

ミカルディスと同様PPARγ活性化作用を持つので、こちらも「メタボサルタン」と言えそうです

ニューロタンと同様に尿酸低下作用があります

イルベサルタンに関しては高用量の投与で尿酸排泄低下作用がみられる可能性があるということです

アジルバ 2012年

  • Ca拮抗薬とほぼ同等の降圧効果
  • ブロプレスと同じ武田薬品から発売

現状一番最後に発売されたアジルバはブロプレスを作った武田薬品が出した薬

ブロプレスから約10年が経過していることもあり、特許が切れてきたタイミングでの新薬発売という流れです

ブロプレスよりも降圧効果が高いという特徴を持ち、Ca拮抗薬とほぼ同等の降圧効果と言ってる書籍も・・・

今の所適応は高血圧のみとなっています

2021年現在、アジルバの特許がきれているため「ザクラス」の後発品である「ジルムロ」が発売になりました

ただ単剤の「アジルバ」の後発品は未だ出ておらず、先に配合錠の後発品が発売されるという普通に考えると不思議な状態になっています

アジルバ単剤よりもザクラスの方が需要があるという結論になったのかもしれないですね

まとめ

今回まとめてみて感じたのがARBはアジルバを除いてほぼ2000年代に出てきていたということです

ですのでほぼ同時期に出た薬としてどこのメーカーも競争が激しかったのが予想できます

ちなみにARBを第1世代と第2世代とにわけて考えている記事もちらほら発見しました

それらによると第1世代は「カンデサルタン」「バルサルタン」

第2世代は主に2つにわけられて

より強い降圧作用を求めAT1受容体への親和性を高めた「オルメサルタン」

降圧以外の作用を持たせ多機能を売りにした「ミカルディス」「イルベタン」

こうやって世代毎に考えてみると、時系列で並べた意味が出てくるのかなと感じましたので紹介させていただきました!

最後に簡単に全体のまとめを

  1. ニューロタン  最初のARB。糖尿病性腎症の適応。尿酸低下作用
  2. ブロプレス   日本で開発したARB。慢性心不全の適応
  3. ディオバン   小児の適応。ディオバン事件
  4. ミカルディス  胆汁排泄。PPARγ活性化作用。食事の影響
  5. オルメテック  従来よりも強い降圧作用
  6. イルベタン   PPARγ活性化作用。尿酸低下作用
  7. アジルバ    現状最も強いARBとされてる。ブロプレスの特許切れ対策

本日は以上になります!お疲れ様でした!

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