BZD系睡眠薬の特徴をざっくり把握しよう!【時系列で学ぶ】

今回の話はBZD系の薬について

BZD系の薬は抗不安薬と睡眠薬とがありますが、今回は分類として睡眠薬に入るBZD系の薬についてです

普段から睡眠薬を目にする機会はかなり多いので、その分服薬指導の回数も増えますよね

BZD系と非BZD系という分類があること、その特徴については勉強し把握しているかもしれませんが、新人薬剤師にとっては薬の名前を覚えるのに精一杯で区別ができない人もいるかもしれないです

「ハルシオンってBZD系だっけ?」とか「アモバンって非BZD系だっけ?」など

今回はそんな新人や若手の薬剤師が毎回感じているかもしれないこの問題を解決出来るような記事を目指していければと思います!

以前非BZD系の睡眠薬についてはまとめていますので、気になる方はそちらもご参照ください!

非BZD系の睡眠薬は数が少ないのでまとめやすかったのですが、BZD系の睡眠薬は非BZD系と比べると数が増えるのでどうやってまとめていこうか悩みました

自分なりにまとめてみた感じにはなりますが、皆さんの勉強のきっかけにでもなればと思います!!

まずBZD系の睡眠薬を国内での発売順に時系列で並べてみました!

  1. ネルボン(ベンザリン) 1967年
  2. ユーロジン       1975年
  3. ダルメート       1975年
  4. ソメリン        1980年
  5. ハルシオン       1983年
  6. サイレース       1984年
  7. レンドルミン      1988年
  8. リスミー        1989年
  9. ロラメット(エバミール)1990年
  10. ドラール        1999年

作用時間毎でまとめることはよくあると思うので必要ないかもしれませんが念のために・・・

作用時間発売年
超短時間型ハルシオン1983
短時間型レンドルミン
リスミー

ロラメット(エバミール)
1988
1989
1990
中間型ネルボン(ベンザリン)
ユーロジン
サイレース
1967
1975
1984
長時間型ダルメート
ソメリン
ドラール
1975
1980
1999
作用時間での分類(BZD系睡眠薬)※国内での発売年
目次

作用時間がだんだん短く

BDZ系の睡眠薬は従来の薬(バルビツール酸系など)に比べ安全性に優れているという特徴がありました

特に呼吸抑制の危険性が低いこと、死亡のリスクが下っているということで睡眠薬はBZD系が主流に

しかしその後、BZD系の睡眠薬には依存性のリスクがあることが判明します

調べてみると英国では1980年代に患者14000人の患者による集団訴訟があったという歴史があるくらいです

その後さらに副作用を抑えた非BZD系の薬などが出てきましたが、当時は安全性が高いと言われていたようなので問題になったんでしょうね

この歴史から考えてもBZD系の指導をする際は依存のリスクなど気をつける必要がありそうです

先程の時系列を見てもわかるように、初期のBZD系の睡眠薬は作用時間が長いものが多かったようです

作用時間が長いと翌日に眠気を持ち越す効果(ハングオーバー)が問題となってきました

そこで作用時間を短くすることで解決を図り、超短時間型のハルシオンを開発したという流れのようです

BZD系睡眠薬の特徴

さてここでBZD系の睡眠薬の特徴について簡単にまとめてみます

ざっと3つのポイントに絞ってみました!

  • 作用時間は「長」⇨「短」へ
  • 作用時間別だと4分類
  • 従来の睡眠薬より安全性に優れる

最初の1つ目は先程書いた通りなので省略します

BZD系の睡眠薬は大きく分けて「超短時間型」「短時間型」「中間型」「長時間型」に分類されます

作用時間半減期
超短時間型2〜4時間
短時間型6〜10時間
中間型12〜24時間
長時間型30時間以上
作用時間タイプ別半減期の目安(おおよそ)

超短時間型はハルシオンだけしか存在しません

従来の睡眠薬に比べ大量服用時にも生命を失う危険性がほぼないというメリットがあり、安全性に優れているということでした

各薬剤の特徴

それでは各薬剤の特徴を国内での発売順に見ていきましょう!

もう一度おさらいすると

  1. ネルボン(ベンザリン) 1967年
  2. ユーロジン       1975年
  3. ダルメート       1975年
  4. ソメリン        1980年
  5. ハルシオン       1983年
  6. サイレース       1984年
  7. レンドルミン      1988年
  8. リスミー        1989年
  9. ロラメット(エバミール)1990年
  10. ドラール        1999年

となっています

ネルボン(ベンザリン)

現存ある薬を時系列で並べた時、一番最初に出てくた薬です

作用時間の分類でいくと中間型

最初に出た薬を基準にして「中間型」と定義しているのかもしれません

成分はニトラゼパム

初めてのBZD系の睡眠薬なので他のBZD系の薬を調べてると比較基準としてネルボンがちょくちょく出てきます

ネルボンの入眠効果は通常15〜45分程度、持続は約6〜8時間程度ということでした

特徴として抗痙攣作用もあります(異型小発作群、焦点性発作)

麻酔前投薬としても適応があります

処方できる日数は90日までと他のBZD系の睡眠薬よりも比較的長いですね

ユーロジン

1975年ダルメートと同じ年に国内で出た薬です

成分はエスタゾラム

開発の経緯に書かれてる内容をまとめると

  1. 中間型
  2. 急性隅角緑内障OK
  3. 禁忌 → リトナビル
  4. 日数制限 → 30日

作用時間の分類はネルボンと同じく中間型

緑内障の発生、憎悪の報告なしということで急性隅角緑内障にも使用可能となっています

普段あまり目にする機会は多くないかもしれませんが、併用禁忌に「リトナビル」があるので注意を

ダルメート

先程のユーロジンでも書きましたが、同じく1975年に出た薬

初めての長時間型のBZD系睡眠薬で成分はフルラゼパム塩酸塩

開発の経緯に書かれてる内容をまとめると

  • 長時間型
  • REM睡眠への影響が少ない
  • 筋弛緩作用が弱い
  • 禁忌 → リトナビル
  • 日数制限 → 30日

長時間型の薬といえば「中途覚醒」や「早朝覚醒」に使われる印象です

この時点で中間型と長時間型の薬の2種類が存在することになります

ソメリン

成分はハロキサゾラム

開発の経緯に書かれてる内容をまとめると

  • 長時間型
  • REM睡眠への影響が少ない
  • 運動機能への抑制が少ない
  • ニトラゼパムと同等の睡眠導入作用
  • 日数制限 → 30日

2つ目の長時間型のBZD系睡眠薬

睡眠導入作用はネルボンと同等で、かつ、安全性はより高いと

ダルメート、ソメリンともに長時間型という特徴以外に目立つポイントがないかなぁと個人的には感じました

ハルシオン

1983年にようやく効果時間が短いハルシオンが発売されました

最初にも書いたとおり、作用時間が長いと翌日にも眠気が持ち越してしまうことあります

この問題を解決するのに短時間型の薬が必要とされました

そこでBZD系睡眠薬の中で一番最初に出たのが超短時間型のハルシオンになります

成分はトリアゾラムで半減期は2.9時間と従来の薬よりもかなり短くなっています

  • 超短時間型
  • 退薬による反跳症状に注意
  • 禁忌薬が複数(CYP3A4関係)
  • 奇異反応(まれ)
  • 日数制限 → 30日

使い勝手は良くなった分注意も必要な薬

ハルシオンは他の薬剤に比べても効果の発現が早く10~15分と即効性が期待できましたが、早朝覚醒や日中不安などが生じ退薬とともに強い反跳症状が現れることがあります

なので不安や緊張を呈しやすい病態には今までの中間型や長時間型の薬の方が有効という理屈になります

しかし短時間で効果が発揮すること、効果が強いことで健忘や依存性が強いというデメリットもあるので注意を!

調べてみるとその特徴から「ハルシオン遊び」として乱用されることもあったとか・・・

ハルシオンの薬理スペクトルはニトラゼパムに近似しており、活性はニトラゼパムや他のBZD系化合物より強いとされています

さらに臨床的に問題になる宿酔感はニトラゼパムより弱く、吸収・排泄がはやいので「より自然に近い睡眠をもたらす薬と」いう内容のインタビューフォームでした

禁忌薬が多いので注意が必要です

併用禁忌は以下の通り

  • イトラコナゾール
  • フルコナゾール
  • ホスフルコナゾール
  • ボリコナゾール
  • ミコナゾール
  • HIVプロテアーゼ阻害薬
  • エファビレンツ
  • テラプレビル

こうしてみると多く見えますが、要するに

「抗真菌薬」「抗ウイルス剤」

を飲んでる人に注意すると考えたらいいかもしれないです

まれではあるようですが奇異反応が現れることがあり、特に高用量やアルコール併用時に出たという報告があるようなので注意が必要です!

  • 奇異反応:睡眠薬服用により不安・緊張作用が高まり攻撃性が増したり錯乱状態になること

サイレース

ハルシオンの翌年に出た中間型の睡眠薬

成分はロヒプノール

  • 中間型
  • 薬理作用はニトラゼパムの約5倍
  • 悪用防止 → 青色色素
  • 麻酔前投薬にも適応あり
  • 日数制限 → 30日

薬理作用はネルボンの約5倍

ネルボンの最小規格は5mgですが、サイレースは1mgと成分量として5倍差があることがわかりますね

たしかにサイレースは睡眠薬の中でも強そうなイメージがあります

サイレースといえば錠剤の色が特徴的ですが、それはこの作用の強さゆえです

これは最初からこの色だったわけではありません

調べていくと、サイレースによる犯罪行為防止の為に2015年よりこの色に変更になっているようです

特に海外では飲食物に医薬品を混入する犯罪行為が行われており、サイレースが関わる可能性が高いということで悪用防止の為に錠剤の色が変更になったという背景があります

ちなみに持ち込み禁止になっている国もあるようです(アメリカ、カナダ)

国内では向精神薬第2種に指定されています

注射製剤もあり、精神運動興奮状態時の鎮静の際に使われることが多いようです

レンドルミン

ここで初めて短時間型のBZD系睡眠薬が登場します

成分はブロチゾラム

今でもよく使われてる薬です

半減期は7時間、Tmaxは1.5時間だそうです

  • 短時間型
  • 持ち越し効果が少ない
  • 生理的睡眠をもたらす
  • 口腔内崩壊錠あり
  • 日数制限 → 30日

BZD系の睡眠薬の中で口腔内崩壊錠といったらレンドルミンですね

レンドルミンD錠はコンプライアンス向上のため2002年から発売されており、今でも使われることがあります

後発品で「グッドミン」という薬がありましたが今は販売中止になってます

昔グッドミンを飲んでたよという方がいたら、それはレンドルミンのことです

リスミー

レンドルミンの翌年に出た薬です。短時間型の薬はそれぞれほぼ同じ時期で国内で出回っていることになりますね

成分はリルマザホン塩酸塩

半減期は10.5時間、Tmaxが3時間とレンドルミンに比べると効果が出るのが遅い印象ですね

  • 短時間型
  • プロドラッグ
  • Tmaxが他剤より遅い
  • 同年に非BZD系のアモバン登場
  • 日数制限 → なし

リスミーはいわゆるプロドラッグという薬で、効果発現に時間がかかる薬となっています

なので効果は比較的マイルドな感じです

そのせいなのかリスミーには日数制限がありません!

日数制限なく使えるのが特徴だとは思いますが、同年に非BZD系の薬が出てきたこともあり、そこまで頻繁には使われていない印象をうけます

ロラメット、エバミール

成分はロルメタゼパム

半減期は約10時間

  • 短時間型
  • 相互作用が少ない
  • 肝臓への負担が少ない
  • 後発品なし
  • 日数制限 → 30日

短時間型の薬の中では1番最後に出た薬ですが、他の2剤に比べると見劣りするのが正直な感想

とはいえ、他の2剤も発売年としては2年ほどしか差がないので、特に優れてるところがなくても不思議ではありません

特徴なのはCYPの代謝が関与しないところでしょうか?

肝機能障害もそこまでないと思いますし、相互作用も少ない

ただ、それ以外に特筆すべきところがないとい感じですね

僕自身もこの薬を触った記憶がありませんね

そこまで使われていないからか、この薬は発売からかなりたってますが後発品は出ていないようです

ドラール

BZD系の睡眠薬の中では最後になります

成分はクアゼパム

  • 長時間型
  • ω1受容体に選択的
  • 食事の影響あり
  • 麻酔前投薬にも適応あり
  • 禁忌→リトナビル 睡眠時無呼吸症候群
  • 日数制限 → 30日

BZD系の薬の時代の流れとして、作用時間が短くなっていったと個人的には感じましたが、最後に出た薬は長時間型のドラールでした

ドラールの特徴の1つにω1受容体の選択性というのがあります

ドラールが出る10年前に非BZD系が出てきたこともあり、こういった特徴を見つけようとしたのかなと個人的には感じました

非BZD系の薬は超短時間型しかないので、ω1に選択的で長く効く薬と考えると他の薬剤との差別化にはなるかもしれませんね

注意点は食事との関係です

ドラールは食後に飲むと血中濃度が上がってしまう薬として知られています

食後に飲むと効果が強く出てしまうことを説明し、食後2時間など間隔をあけて飲むよう指導を

この縛りが発生すると一気に使いにくくなりそうな気はします・・・

もちろん夜食もダメなので注意を!

日数制限は30日です!

まとめ

今回はBZD系の薬を紹介しました!

今回は睡眠薬にしぼりましたが、それでも全体を把握するのは大変だと感じました

抗不安薬も睡眠薬として使われるので、抗不安薬も含めて把握しておく必要がありますね

今回の内容も簡単にまとめてみます

  1. ネルボン(ベンザリン) 最初のBZD系睡眠薬。90日まで
  2. ユーロジン       急性隅角緑内障OK
  3. ダルメート       初の長時間型
  4. ソメリン        ネルボンと同様の睡眠導入作用のある長時間型
  5. ハルシオン       初の超短時間型。耐性や依存に注意必要
  6. サイレース       作用が強い。悪用防止で青色色素。海外では持ち込み禁止も
  7. レンドルミン      口腔内崩壊錠あり。初の短時間型。中途覚醒にも
  8. リスミー        他より効果発現がゆっくり。日数制限なし。同じ年に非BZD系登場
  9. ロラメット       CYP介さず代謝
  10. ドラール        ω1受容体に選択的。食後服用×

さて今回もなんとか無理やりまとめた感じになりましたが、皆さんの参考になったでしょうか?

この中で日常的によく見かけるなと感じたのは短時間型のレンドルミンでした

今現在のBZD系の睡眠薬では比較的使いやすいのかもしれません

ハルシオンやサイレースなどは見かけることはありますが、やはり切れ味や効果が強い印象だけに副作用など起きていないか慎重に観察している気がします・・・

他の中間型の薬も使うことはあるので特徴は全体的におさえておいた方がいいと思います!

今回はここまでになります。お疲れ様でした!!

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